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便秘でお困りではありませんか?

[2024.05.14]

便秘でお困りではありませんか?

便秘とは一般的な疾患であり、少し便秘になったからといって深刻に気にされる方はあまりいないかもしれません。しかし、慢性的に便秘が続く、全く改善の兆しがみられないといった状況の場合は注意が必要です。便秘の症状が深刻化すると腸内のメカニズムに不調を招き、様々な二次的症状を引き起こします。

慢性便秘症

日本の慢性便秘症に対するガイドラインでは、便秘とは「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義されます。具体的には、自発的な排便が週に3回未満、排便時に強くいきむ、便が硬い、残便感がある、肛門が詰まったような感じや用手的な排便介助が必要などのうち二つ以上が当てはまれば便秘といい、症状が半年以上続くことを慢性便秘症といいます。一言で便秘といえば簡単ですが、便秘の症状や原因はさまざまです。

便秘だから下剤を処方といった対応は適切とは言えません。どのような症状の便秘なのか、何が原因の便秘なのかを適切に判断する必要があります。毎日排便がないから便秘というわけではありませんし、すっきり違和感なく排便ができていれば問題はありません。排便に違和感のある方はお気軽にご相談ください。

便秘の種類
機能性便秘
直腸性便秘 若い女性や子供、寝たきりの高齢者に多い便秘です。排便を我慢することで、便がでる直前の溜まっている感覚が鈍くなり、便秘になります。直腸を刺激するような座薬や浣腸にて排便を促すことで改善します。便を柔らかくする薬を使用することはありますが、腸を強制的に動かす刺激性下剤を使用することはありません。
痙攣性便秘 精神的や肉体的なストレスが一因となって、自律神経が乱れ大腸の一部が痙攣のように収縮して便が兎糞状に硬くなります。痙攣性便秘になると便がでにくくなったり残便感として症状を感じるようになり、便が1週間くらいでないこともしばしばあります。なかでも腹痛を伴う方は「便秘型過敏性腸症候群」という疾患の可能性があります。

便を柔らかくする薬が有効なことが多いです。便が硬くなりすぎてでない場合は、浣腸や刺激性下剤を一時的に使用することがあります。大腸をしっかり外部から刺激をすることで蠕動を促すことができますから、腹部のマッサージやランニングやヨガなどのエクササイズも非常に重要です。
弛緩性便秘

大腸の便を押し出す蠕動運動が低下することで、便が長い時間大腸内に停滞し、水分が吸収されることで便がかたくなり、引き起こされる便秘です。高齢者や寝たきりの方に多い便秘です。蠕動運動が低下する原因として長年の刺激性下剤(センナ・大黄など)により、大腸の動きが悪くなってしまい引き起こされることもあります。

この場合は、刺激性下剤を徐々に減量しつつ、便を柔らかくするお薬や腸の動きを整えるお薬を使いながら、便秘の解消を目指します。刺激性下剤は時折使うのには問題のない有効な薬ですが、連用には注意が必要です。

長年の刺激性下剤の使用により大腸に色素が沈着し黒ずんでいます。刺激性下剤の連用はメラノーシスを起こすだけではなく、徐々に薬が効きにくくなり内服薬が増える悪循環にあります。

器質性便秘

大腸内に大きな進行癌などがあると、便が通過できずに便秘になります。このように、大腸自体に便が通過できない物理的な何らかの理由がある場合を器質性便秘といいます。大腸内視鏡検査や腹部エコー、CTなどで原因を精査することが必要です。


症候性便秘

別の病気(糖尿病や甲状腺機能低下症、パーキンソン病など)の症状で便秘になります。もともとの病気の治療が必要になります。

薬剤性便秘

抗コリン薬や向精神病薬、抗がん剤などでおこります。原疾患の治療とのメリットとデメリットを考えながら、便秘のお薬を併用していきます。

便秘になりやすい原因

便秘に関する論文や研究から便秘しやすい人の習慣や傾向が見えてきます。しかし、その習慣を直したからと言って便秘が治るというわけではありません。ひとつの指標としてチャレンジできそうなものがあれば試みてみましょう。

便秘にかかわる生活習慣・食生活・体質の傾向TENDENCY
排便する時間が不規則であると男女ともに便秘をしやすく、女性ではダイエット経験者や昼食摂取が少ない人で便秘が多い傾向にある。逆に男性では一口の咀嚼回数が30回以上や1日に1.5L以上の水分を摂取する人に快便が見られた。
肥満であるほうが便秘をしやすい傾向にある。
毎日運動する人は週に1回運動する人より便秘が少ない。
食物繊維を1日20gとる人は1日7gしか取らない人に比べて便秘が少ない。
不眠症の患者に便秘の患者が多い。
朝食を食べないと便秘をしやすくなる傾向にある。(便秘をしていない人では朝食を食べない人は20%程度ですが、便秘の人の30-50%が朝食を食べておりませんでした。)
高齢者で筋力が弱まってくる「サルコペニア」が問題になっています。サルコペニアは体の筋力だけでなく腸の平滑筋にも起こり消化管運動機能も低下させ、便秘を招く可能性が報告されています。適度な運動は必要かもしれません。
便秘の解消に繋がる食事や生活習慣

慢性便秘症には一般的に食物繊維、乳酸菌、水分摂取、運動が良いと言われていますが、食物繊維や水分を取らないよりとったほうがよい、運動もしないよりはしたほうが良いというレベルで、明確なエビデンスがあるわけではありません。

食物繊維はヒトの消化酵素で分解されない食物中の難消化成分と定義され、水溶性と不溶性があります。不溶性食物繊維は水分を吸収して膨張し便量を増やす効果があります。便量と消化管通過時間は逆相関があり、便量が多ければ消化管内容物が速やかに排出されることになり、便通改善が期待されます。 水溶性食物繊維は消化管で消化吸収されずに大腸に到達し, 乳酸菌やビフィズス菌などの腸内細菌の増殖を促進する効果があります。ただ、慢性便秘の改善と摂取する食物繊維の量には必ずしも相関は見られないとの報告もあります。特に不溶性食物繊維は水分を吸収して膨張し便を増やすため、便秘を悪化させる可能性があります。

乳酸菌も便秘に有効とされます。まずはヨーグルトやヤクルトⓇ、ビオフェルミンⓇなどを思い浮かべるかもしれません。このような乳酸菌のことをプロバイオティクスと呼んでいます。 プロバイオティクスとは「適正な量を摂取したときに有用な効果をもたらす生きた微生物を指し、腸内細菌のバランスを改善することにより、ヒトに有益な作用をもたらすもの」とされています。プロバイオティクスが便秘に有効とされる理由は以下のとおりです。

乳酸菌などは乳酸や酪酸などの酸を産生することで、腸内のpHを低下させ腸の動きをよくする
プロバイオティクスには抗炎症作用や免疫調整作用があり腸の動きを改善させる
腸内細菌のバランスが崩れるとメタンガスが多く発生し、メタンガスが食べたものの通過時間を長くさせてしまうが、プロバイオティクスは食べたものの通過時間を改善したり、腸の動きを改善する

このようなプロバイオティクスは便秘に対しては、排便回数の増加に有効とされており推奨されていますが、どのような種類の細菌をどのくらいの量とればよいかは人それぞれで、絶対に便の回数が増えるというものではありません。

水分摂取に関しては水分を多くとれば便は柔らかくなるような印象は受けますが、単純に水分を多くとったから、便が出るようになるわけではありません。出やすくなる可能性があるということです。ただ、ミネラルウォーターをとると特に硬水はマグネシウムやその他のイオンが含まれており、そういったイオンにより便が出やすくなる可能性はあります。

運動が便秘に対して有効である点に言及している論文もありますが、エビデンスレベルは高くなく、推奨程度にとどまります。軽度の運動は腸機能に変化をもたらしませんが、ジョギングなどの活発な運動は消化管の活動性を高め便秘を予防する可能性は示唆されています。

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